学科ニュース
崇城大学情報学部情報学科による熊本市北区と連携したPBL講義を紹介
2026年03月03日
はじめに
本学では、学生の課題解決能力の向上を目的として、PBL(Project Based Learning:課題解決型学習)に積極的に取り組んでいます。
その中でも、崇城大学情報学部情報学科未来情報コースおよび崇城大学IoT・AIセンターは、熊本市北区役所ならびに一般社団法人SCBラボと2020年に締結した、地域コミュニティ構築およびイノベーション創発に関する包括連携協定に基づき、PBL型講義「異分野イノベーション基礎・応用」および「地域メディア基礎・応用」を開講しています。
本講義では、資本や人材が不足しがちな地域においても地域活動を再現的かつ持続的に推進するため、地域活性化および地域イノベーション創発の理論である地域コミュニティブランド(SCB)の研究機関である一般社団法人SCBラボから提供されるPBL教育プログラムである「SCBイノベーション創発メソッド」を用いています。本メソッドに基づき実施される全15回の講義には、熊本市北区役所職員が講師として参画します。
令和7年度は、北区職員約10名と総勢38名の学生が小グループを編成し、熟議を通じて選定した北区固有の地域課題の解決に向けたプロジェクトを同時並行的に推進しました。これにより、地域と連携した実践的な学びが展開されています。

図1 北区連携PBL講義のイメージ図
PBL講義の4つのテーマと具体的な取り組み
熊本市北区とのPBL講義はテーマは、1.人材育成、2.地域資源の利活用、3.地域活動の発信、4.グローバルという4つのテーマで進められています。
1.人材育成
1-1. 中学生人材育成プロジェクト
地域課題の解決や新たな価値創発に向けては人材育成が最も重要です。特に北区の未来を担う中学生人材からは、まちづくりにおいて中学生が活躍し成長できる機会が少ないという問題点が挙げられていました。
そこで、北区民約1万人が来場する「北区こどもまつり」において、中学生有志が企画・運営を主体的に担う体制を構築しました。学生は北区および地域企業と連携しながら、中学生の活動支援をおこない、その成果として、2025年11月に開催された北区こどもまつりで会場全域を回遊するスタンプラリーを実施し、373人の参加を集めるなど、企画は成功を収めました。
プロジェクト終了後のアンケートで、中学生らは自ら成長を感じた点として下記の事柄を挙げました。
・コミュニケーション能力 具体的な感想としては「周りを見て行動できた」「助け合うことができた」「他者の意見を聴くことができるようになった」
・企画力 具体的には「アイデアを出せるようになった」
上記のような成長を実感することにより、約90%の生徒が次年度も引き続きプロジェクトに参加しさらに成長したいとの声を上げています。

図2 スタンプラリーのブースで中学生(右)をサポートする学生(中央奥)
1-2.DX人材育成の取り組み
デジタルを活用した地域変革を目指す北区では、小中学生のDX人材を育成するプロジェクトとして、「北区小中学生向けPythonプログラミング教室」をオンラインで実施しています。本教室は、2021年の初開催から数えて今回で5回目となります。
教室では、IoT・AIセンター長である星合隆成教授が講師を務め、星合センター長が執筆した書籍『パパっとPython ドリルで入門プログラミング』を教材として使用し、現在、世界的にも広く活用されているプログラミング言語Pythonの基礎を学んでいます。
また、世界的な研究者である星合センター長から、プログラムが生まれた背景や、コンピュータが文字と数値をどのように区別しているのかといった根本的な仕組みについても体系的に学習しています。このように本質から理解を深める学びを通して、将来のDXを担う若い人材が着実に育成されています。

図3 プログラミング教室の様子
1-3.職員や企業のイノベーション人材育成
未来を担う若者の育成を円滑に進めるためには、そのサポート役となる自治体職員や企業人の学びが欠かせません。このため、SCBイノベーション創発メソッドの提唱者である星合センター長が、北区職員および北区内の企業代表者を対象に研修を実施しています。
本研修では、多世代・異分野・異文化といった垣根を越えて「ゆるやかにつながる」ための方法論を学びます。人口減少や経済力の低下に直面する地域であっても、こうしたつながりを基盤とすることで、持続可能な地域共創社会の構築が可能であることを理解します。
さらに、本研修で紹介された「ゆるやかなつながり理論」を活用し、地域共創社会の実現を目指す自治体によって設立された「自治体連携プラットフォーム協議会」に、熊本市が参加することが決定しています。これにより、北区職員や地域事業者には、今後さらに高度で実践的な学びの機会が提供される予定です。

図4 星合センター長による北区研修会の様子
2.地域資源の利活用
2-1.植木温泉活性化プロジェクト「植木温泉水合戦」
とろりとした独特の泉質で多くのリピーターを誇る植木温泉に、あらためて「入る理由」を創出することを目的に、地域住民とともに構想し実践へと移す学生プロジェクトを開始しました。北区職員や温泉旅館組合、地域住民と議論を重ねた結果、老若男女が互いに水鉄砲を打ち合い、その後に濡れた身体を温泉で温める「植木温泉水合戦」を企画しました。まずは概念実証を目的として、植木温泉近隣の田底小学校と連携し、小学生とその保護者を対象としたイベントを開催しました。
当日は約50名が参加し、企画は大変好評を得ました。また、イベントから温泉入浴までの導線を大きなコストをかけることなく設計できたことで、本取り組みの持続可能性も確認することができました。今後、学生たちは、北区内企業対抗、小学校対抗、さらには外国人参加型など、発展型の水合戦へと展開していくことを構想しています。

図5 水合戦イベントの様子
2-2.空き家利活用プロジェクト
北区では、空き家率が全国平均とほぼ同水準の約14パーセントに達しており、その利活用が大きな課題となっています。そこで学生たちは、前年度に実施したニーズ調査の結果や、近年の人口減少・経済停滞の状況を踏まえ、多額の資金を投じてリフォームすることが難しい空き家を「地域運営型公民館」として再生し、子どもをはじめとする地域住民の交流拠点として活用することを提案しました。
一方で、施設運営のために専門職員やコーディネーターを雇用するには相応のコストがかかるという問題があります。そこで次世代育成の観点から、子どもと関わり、自らの特技や技術を教えることのできる地域人材を発掘する調査事業を開始しました。約130名に対する聞き取り調査の結果、地域住民の約78パーセントが子どもに何らかの技術を教えることができると回答し、さらに約98パーセントが次世代育成を目的とした地域運営型公民館の設立に賛同していることが明らかになりました。これにより、地域内に潜在的な担い手と高い合意形成の基盤が存在することが確認されました。

図6 調査の様子
3.地域活動の発信
3-1.台湾国際放送で北区情報を配信
2025年にIoT・AIセンターと連携協定を締結した財團法人中央廣播電臺(台湾国際放送:Radio Taiwan International)のインターネットラジオ番組「こんにちは台湾」において、北区の多様な地域活動や観光資源を、学生たちが取材・編集し、毎月配信しています。
具体的には、北区植木温泉旅館業組合が開催した、竹あかりと温泉の湯けむりを組み合わせた幻想的な空間を演出する観光イベント「植木温泉アートスパ湯幻灯」や、北区龍田まちづくりセンターが外国人観光客向けに実施した日本文化体験イベント「浴衣de抹茶」などを取り上げました。
これらの取り組みを、日本に関心を持つ台湾の方々に向けて発信することで、北区の魅力を海外へと広げる役割を果たしています。

図7 植木温泉湯幻灯の取材の様子
3-2.北区地域活性化動画コンテスト
2022年に始まり、今回で第4回目を迎える北区地域活性化動画コンテストは、学生が企画・運営を担い、地域の魅力発信と学生自身の成長を同時に実現する取り組みです。現在、38名の学生が取材班と運営班に分かれて活動しています。
取材班は、北区の地域資源を発掘し、出演交渉を行ったうえで、著作権や肖像権に配慮しながらインタビュー取材や動画編集を行い、完成した作品をコンテストに応募します。一方、運営班は、北区に加え、行政機関、金融機関、報道機関などスポンサー兼審査担当企業との調整を行い、運営計画や広報戦略を策定します。より多くの応募作品を集めるためのプロモーションも担当し、今回過去最高となる30点の応募作品を集めました。このようにコンテストを通じて多様な役割を経験することで、学生は実践的な企画力やチームワーク、地域と協働する姿勢を身に付けています。
また、学生が目指す協働の輪は熊本市北区にとどまりません。前回からは岡山市北区との共同開催へと発展しました。将来的には、全国に12ある「北区」と連携したコンテストへと進化させることで、各地の北区が展開する特色ある地域活性化の取り組みを相互に学び合える機会を創出したいと、学生たちは意欲的に活動を続けています。

図8 自治体や企業へのプロモーションの様子
3-3.SCB放送局レギュラーテレビ番組
IoT・AIセンター内に設置されたSCB放送局は学生によって運営されており、2017年に本学と包括連携協定を締結したJ:COM熊本(熊本地上波10ch)のレギュラーテレビ番組を毎月制作し放送しています。この放送枠を活用し、北区と学生が連携して推進する個性的な取り組みを広く発信しています。
2025年10月の放送では、「北区集談会」と呼ばれる北区独自の取り組みを取り上げました。これは、北区内の企業や地域団体が地域課題について徹底的に議論し、課題解決に向けたチームづくりを進める実践的な場です。学生たちはこの取り組みを取材し、補助金や特定のコーディネーターに依存せず、ボトムアップ型で低コストに地域活動を組織化している好事例として紹介しました。

図9 取材の様子
4.グローバル
外国人向け近年、北区では、台湾の著名な半導体企業が周辺地域に進出したことに加え、農業や企業における人手不足を補うため、台湾をはじめとするアジア圏からの外国人住民が増加しています。一方で、日本の生活ルールを学ぶ機会が限られている外国人住民と日本人住民との間で、生活上のトラブルが生じる可能性も指摘されています。こうした課題を未然に防ぐため、北区が推進する多様な啓発イベントを学生がサポートしています。
例えば、地域ルールの理解促進やマナー向上を目的として、外国人向けの自転車ルールやマナー啓発動画を学生が多言語で制作しました。これにより、言語の壁を越えた分かりやすい情報発信を実現し、安心して共生できる地域づくりに貢献しています。

図10 動画を作成する学生の様子
むすび
熊本市北区と連携した本学のPBL講義では、身近でありながら解決が容易ではない多様な地域課題に対して、学生が主体的に取り組んでいます。
今後も北区の課題解決に実践的に関わる学びを通して、地域創生に貢献できる人材の育成に一層努めてまいります。