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2018年11月27日
本学の尾上さん(工学研究科修士課程応用微生物工学専攻2年)と岡拓二准教授(生物生命学部応用微生物工学科)を中心とする研究グループは、糸状菌類が創り出す"真菌型ガラクトマンナン"という糖鎖のマンナン主鎖生合成を担う2つのα-(1→2)-マンノース転移酵素の責任遺伝子を見つけることに成功しました。本成果を足がかりに、新しい抗真菌剤が開発されることが期待されます。本研究は Nature Publishing Group(NPG)が発刊する科学雑誌であるScientific Reports(2018年11月16日発行) に掲載されました。
尾上さん(工学研究科修士課程応用微生物工学専攻2年)
【真菌型ガラクトマンナンとは】
真菌型ガラクトマンナンとはチャワンタケ亜門に属する糸状菌が、その細胞壁や培地中に創り出す糖鎖(多糖)の1種であり、マンノースからなるマンナン主鎖とガラクトフラノースからなるガラクトフラン側鎖で構成されています。真菌型ガラクトマンナンは、糸状菌の正常な生育に必要な多糖です。真菌型ガラクトマンナンは、糸状菌細胞壁の最表面を覆っていることから感染宿主との相互作用に関係することが推察されています。
【世界的な背景と崇城大学の研究】
近年、高度な医療技術の発展に伴い糸状菌を原因とするヒトの感染症が増加しています。また、農作物に病気を引き起こす原因の多くは糸状菌であり甚大な損害が世界各地で毎年のように報告されています。現在知られている抗真菌剤は医薬や農薬へ応用されていますが、使い続けているうちに抗真菌剤に対する抵抗性を獲得した糸状菌が出現してしまいます。そこで、人類の将来に向けて既存のものとは異なった新規な作用機序をもつ抗真菌剤の開発が求められています。
今回、本学で発見したマンナン主鎖生合成遺伝子を破壊すると、糸状菌の生育が著しく抑制されることがわかりました。このマンナン主鎖生合成酵素の活性を阻害する化合物を探索することで新規な抗真菌薬の開発に繋がるのではないかと考えています。岡准教授は、これまでにガラクトフラン側鎖の生合成を担うβ-(1→5)-ガラクトフラノース転移酵素 (GfsA)の遺伝子も同定することができています。
■掲載論文(英語)はこちら
https://www.nature.com/