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  1. 納豆の「粘り」を守れ! ~粘り成分の減少、その原因は「動く遺伝子」だった~

プレスリリース

納豆の「粘り」を守れ! ~粘り成分の減少、その原因は「動く遺伝子」だった~

2025年05月19日

報道発表


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報道機関各位

納豆の「粘り」を守れ!
~粘り成分の減少、その原因は「動く遺伝子」だった~


崇城大学生物生命学部の岡 拓二 教授、門岡 千尋 准教授らの研究グループは、マルキン食品株式会社との共同研究により、納豆菌における粘り成分(γ-ポリグルタミン酸:γ-PGA)の産生量が低下する原因を分子レベルで解明しました。長年、納豆製造現場で課題とされてきた粘りの低下が、「動く遺伝子」によるγ-PGA産生関連遺伝子への挿入によって引き起こされることを明らかにし、納豆の品質管理や安定生産に向けた新たな知見を提供しました。

この成果は、2025年5月3日付で国際学術誌『Food Microbiology』(エルゼビア社)にオンライン掲載されました。


【発表のポイント】
⚫ γ-PGA産生量の低下した納豆菌79株を単離し、形態と産生量により2種類(タイプA・タイプB)に分類しました
⚫ タイプBでは、オリゴペプチド輸送系遺伝子 oppA または oppB に、「動く遺伝子」であるIS4Bsu1またはIS1182Bsu1が挿入されていることを発見しました
⚫ 世界で初めてIS1182Bsu1が実際に「動く遺伝子」であることを実証しました
⚫ opp 遺伝子群がγ-PGA生合成に関与することを実証し、新たなγ-PGA生合成制御経路を提唱しました


【研究の背景と概要】
納豆は日本の伝統的な発酵食品であり、高タンパク・低脂肪で、ビタミン類も豊富に含まれることから、健康的な食品として広く親しまれています。納豆特有の「粘り」は、アミノ酸であるグルタミン酸が重合した生体高分子、γ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)によって生み出されます。納豆の粘りの強さは、消費者の評価や嗜好性、ひいては商品価値に直結する重要な要素とされています。これまで、納豆菌に自然に生じる変異によって粘りが低下する現象は経験的に知られていましたが、その分子メカニズムは十分に解明されていませんでした。
本研究では、納豆菌に自然発生したγ-PGA産生量低下変異株の原因を、最新の技術を用いて解析し、その分子メカニズムの一部を明らかにしました。研究グループは、1290株の納豆菌株を解析し、そのうち79株においてγ-PGAの産生が顕著に低下していることを確認しました。これらの株を詳細に解析した結果、タイプAではクオラムセンシング因子 comP遺伝子に、タイプBではオリゴペプチド輸送を担う oppA または oppB 遺伝子に、「動く遺伝子」であるIS4Bsu1またはIS1182Bsu1が挿入されていることが判明しました。これらの挿入によって遺伝子の発現が阻害され、γ-PGA合成に不可欠なシグナル伝達が妨げられた結果、粘りの低下が引き起こされたと考えられます。


【今後の展望】
納豆の粘りは消費者の嗜好や製品価値に直結する重要な品質指標です。これまで経験的に知られていた粘りの減少について、新しい分子メカニズムを明らかにしました。今後は、「動く遺伝子」の挿入を回避した安定株の選抜や、高γ-PGA産生株の育種により、納豆の品質向上と安定生産への応用が期待されます。


【マルキン食品から一言】
マルキン食品株式会社は、創業以来「愛ある味のパートナー」として、自然の恵みを活かした食品づくりを通じて、皆さまの健康と笑顔を支えてまいりました。
本研究は、納豆の粘りや品質を向上させることを目的とした取り組みであると同時に、納豆づくりを支える納豆菌に対する理解を深めることを目指した基礎的研究でもあります。
これまで培ってきた伝統的な技術を基盤に、最新の微生物解析技術を活用することで、今後も安心・安全で高品質な製品をお届けできるように努めてまいります。


【本研究成果の発表】
• 掲載誌:Food Microbiology(エルゼビア社)
• 公開日:2025年5月3日
• DOI:https://doi.org/10.1016/j.fm.2025.104805


【発表者】
マルキン食品株式会社:
• 野口 麻希 氏
• 谷﨑 巧将 氏
• 工藤 久美子 氏

崇城大学 生物生命学部:
• 野口 雅幸 氏(学生)
• 矢壁 駿 氏(学生)
• 小島 幸治 教授
• 平 大輔 教授
• 門岡 千尋 准教授
• 浴野圭輔 教授
• 中山 泰宗 教授
• 岡 拓二 教授


【論文情報】
論文タイトル:Insertion of IS4Bsu1 or IS1182Bsu1 into the Oligopeptide-Permease Gene Cluster Reduces γ-Polyglutamic Acid Production in Bacillus subtilis subsp. natto

著者:Maki Noguchi, Yoshiyuki Tanizaki, Kumiko Kudo, Masayuki Noguchi, Shun Yakabe, Kouji Kojima, Daisuke Hira, Chihiro Kadooka, Keisuke Ekino, Yasumune Nakayama, Takuji Oka

雑誌名:Food Microbiology
DOI:https://doi.org/10.1016/j.fm.2025.104805

公開日:2025年5月3日


【取材に関する問合せ先】
崇城大学 広報課
 • TEL:096-326-3417
 • E-mail:koho@ofc.sojo-u.ac.jp
マルキン食品 商品本部
 • TEL:096-325-3232
 • E-mail:y-tanizaki@marukinfoods.co.jp


【研究に関する問合せ先】
崇城大学 生物生命学部生物生命学科
教授 岡 拓二
 • TEL:096-326-3986
 • E-mail:oka@bio.sojo-u.ac.jp