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  1. 【講演レポート】教養講座「大桃美代子氏」講演要旨

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【講演レポート】教養講座「大桃美代子氏」講演要旨

2015年06月19日

2015年6月19日 タレント 大桃美代子氏講演要旨

◎才能は地方で輝く!! ~一次産業を活かすアイデア~

魚沼市に生まれ、父も農家だったが、子供のとき田んぼに入ったことはなかった。その代わり食べ物には興味があった。芸能界は身体が資本、食べ物が健康を作る。小さいときは身体が弱く、漢方薬やマムシ、熊の胆(い)を口に入れていた事も関心を高めた要因だろう。

進学後、スティル写真のヘアモデルをしていたが、「あなたはムービーがいいわね」の一言がきっかけで、テレビの仕事をするようになった。一度は銀行員になったが、最初はお茶汲みが仕事。しかしお茶汲みは奥が深い。支店長が「お茶持って来て」と言って指を二つ出すと2人分。手を上の方に出すといいお茶をお出しする。手を下の方に出すと、緑色がよく出る普通のお茶というサイン。鉄工所のおじさんが「若い人がいれるお茶はうまいね」と言ってくれた。ところが「あっ」と言うので、これはお茶の種類がばれたかなと一瞬どきっとしたが、「茶柱が立っている」と喜んでくれた。銀行も、すべてはお茶から始まると勉強させられた。

やがてNHKの『クイズ日本人の質問』や日本テレビの『ズーム・イン・スーパー』など様々な番組に出演してきた。2004年の10月23日、地元新潟でのシンポジウムがある前の日に、実家に帰った時に中越大地震にあった。まずゴーゴーという大きな音が聞こえ、次にガタガタと縦揺れが来て、ユサユサと横揺れになった。情報を得ようと携帯電話でテレビ局に掛けたら「大桃さん、レポートしてください」と言われ、近所を回ってレポートしました。地震も3カ月は毎日報道されるが、半年、1年経つと報道が少なくなる。福島では4年経っても仮設住宅という人がいるが、もうほとんど報じられない。

被災地からどうしたら報じられるか考えたとき思いついたのが農業だった。新潟はお米だと思ったのですが、白いお米だと他の農家の分を取ってしまうので、お米に混ぜて使う雑穀として黒米、古代米を作ることにした。黒米は白いコメに混ぜて炊くと赤飯になる。今の赤飯は黒米が作られなくなったので小豆で代用しているのです。抗酸化作用のあるアントシアニンが豊富で、中国では「くすり米」とも言われる。

そんな古代米作りを無農薬でやりたいと考えた。富山で、無農薬でやっている先生に教えてもらった。実際作っていくには農家の協力を得て種から苗を作る必要があるが、白い米に黒いのが混じるといやだというので断られ、最後にやっとやってもらえる農家を見つけた。有機農業をやるため米ぬかのペレットを使った。炭の粉も多孔質なのでバクテリアが住みやすい。もう一つ生物のフンを使おうと考えたが、鶏フンや豚フンは「臭い」と言われ、魚カスを選んだ。

テレビに撮ってもらうのにおしゃれな農業も心掛けたが、雨風が強いので、結局は1650円で買った雨合羽がいちばん役立った。トラクターから田植え機、コンバイン、乾燥機、選別機を買い、車庫まで建てた。でもテレビ局の人が「大桃さん、手植えがテレビ的にはいいですね」と言うので、枠というハシゴみたいなのを使って型を付けて、手植えすることにした。本当に無農薬は大変。難防除雑草のクログワイが生えてきて、毎週通って草取りをした。でも無農薬農業をやっているとカエルやドジョウ、絶滅危惧種のシャジクモ(車軸藻)まで帰ってきたのはありがたい。今これを「桃米」というブランドで売っている。200グラムで1500円と日本でいちばん高い米でしょう。

これからは1次産業である農業の6次産業化が必要だと言われる。例えばグリーン・ツーリズム。イタリアの田舎に行ったとき農家がとてもおしゃれで、いい景色、いいワインがあった。グリーン・ツーリズムで成功するにはそうしたおしゃれ感が必要だ。伊是名島は沖縄本島から船で40分かかる。古民家を一棟借りできる。自炊やレストランもあるが、1人1600円で地元の「おばあ」が酢の物や刺身まで届けてくれる。「話しようか」と言うので「話してください」と言うと、1時間3000円という。「踊りみたいか」「太鼓隊呼ぼうか」となって、これも1時間3000円。そこに雇用が生まれ、喜んでもらえるので「おばあ」もますます元気になる。

愛媛県の中島は「農音」というのが有名。かつてミカン栽培が盛んだったが、ミカン農家が減っている。そこに田中さんという人が東京から奥さんの実家に移り住んできて、SNSで島のことを発信した。横浜のラッパーの人も来て一緒にミカン作りしている。この小さな島には3年間で30人移り住んできた。「島で暮らしたい」と言う人にはIT企業に勤めていた人が多い。島でやっているのは都会の時と同じパッケージ・デザインだったりするが、仕事が終わったらすぐにサーフィンしたり、音楽を楽しんでいる。才能やキャリアを持っている人は田舎でも通用する。皆さんも一度は都会に出て就職しても、キャリアを積んだ後で田舎暮らしを考えてみてください。

宮崎県の酒谷(さかたに)では棚田を守るなかで道の駅まで作った。街道に桜を植えて他県から多くの人が見に来ている。桜島の旬彩館では女の人は使える時間がそれぞれ違うので、シフトを組んで仕事をしている。ドレッシングを作って5000万円の売り上げをあげ、毎年ハワイに行っている。宮崎県川南町では間伐材を使って木質バイオマス発電をやっている。山でないとできないことだ。

田舎は何もないと思っているが、実はお宝が眠っている。やがて農業と工業が一緒になってやっていく時代が来る。皆さんは工業系だが、何も農業をやる必要はない。工業系の人が農業の人と知り合って意見交換する事で、きっとそこに新しいアイデアが生まれます。

(文責・井芹)


大桃美代子様 写真s.jpg

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(敬称略)