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【講演レポート】教養講座「村嶋恒徳氏」講演要旨
2015年06月15日
2015年5月29日 村嶋恒徳氏講演要旨
◎ 一剣士が伝えたいこと~剣の技と絵の心~
私はいま茨城県つくば市に住んでいるが、もとは熊本の出身である。中学、高校から剣道を学び、半世紀、面をつけて稽古している。剣道は教士七段で、八段試験には24回不合格になっており、修行中である。その間、油絵の先生と書道の先生に恵まれ、墨絵をやるようになった。現在、剣道の絵しか描かないが、剣道の稽古と絵を完成させるための心持が似ているように思っている。昨年、還暦を迎え、熊本で個展を開いたとき、剣と絵の心持ちを学生に話すよう求められ、きょうの講演が実現した。
絵を描きながら剣道の説明をする。墨は市販のものを使い、濃いもの、中くらい、薄いものの3種類を用意する。筆はふだん細い1本ですが、きょうは4種類使う。紙は和紙。大きな色紙を作ってもらった。
私は下書きをはしないので、まず何を書くかをキャンバスにイメージ想定する。今日は出小手を打った絵を描く。空いたスペースに字を書くイメージで描き始める。最初の線は、面を被ったところの後ろの線である。「面は富士山の形のように着けろ」と指導されてきたので、こだわりの部分である。左から光が当たっていると考えて書く。濃淡をつけていくが、影の描き方は2つある。奥の部分から始めて薄い方に順に書く方法と、私がやっているのは先に水を引いてしまい、濃い墨を塗りじわーっとにじみを紙に任せる方法である。そこで乾かないと前に進めない。先に行きたいが、我慢が必要だ。そこが剣道と似ている。剣道でも剣をかちっかちっとやっている。皆さんは面白くないかもしれないが、負けないために必要だ。チャンスというときに打ち込むが、打たれることもある。我慢することが大事なところが剣道にも通じる。スポーツの3Cというのがある。Confidence 自信、Concentration 集中、Coolness 冷静さだ。「行っちゃえ」だけでは失敗する。
次に動きを表現したい。ここに面のヒモがある。私はこうヒモを出して書く。ヒモを出すと動きが出る。実際はこうならないが、忠実に描くことがさほど重要ではないと感ずるようになった。それが自分を超えるという段階である。ピカソも風景画も描くのであるが、それを超えて超越的に自分を超えており、現在、表現してああいう絵になっている。茶道でいう『守・破・離』の「離」も自分を超えるところにある。
空間があるので字を入れてみる。今回は、スペースがなくなったので一文字にして「無」と入れる。「字は黒いところで書くのでなく、余白で書くのが字なんだ」と教えられた。全体を見ながら書くのが大事。剣の師が「将棋より囲碁を勉強しなさい」と言われるのは、囲碁はあとあとを考え、全体として勝っているのが大事だからである。さて、どこでやめるかが大事だ。もう少し書きたいが今日はここでやめる。次に印を押す。私は、関防(かんぼう)印・引首(いんしゅ)印として「平常心」を使う。姓名印すなわち落款(らっかん)を押す。その他、遊(ゆう)印もある。
もう一枚試合前のチームを描く。「さあ立つぞ」と面をつけようとしている人。面をつけてヒモを結んでいる人。中堅は面を置いて準備している。副将は竹刀を準備。大将は素振りをしている場面を描いた。でき上がったが白と黒だけでは味気ない。色をつけたい。インスタント・コーヒーで描くとコンピューターでも色の要素を解析できないことにヒントを得て、コーヒーで色を付けることを思いついた。海外指導に行ったときも簡単に手に入る。コーヒーをパッパッとかけると、味が出てくる。ちょっと塗るだけでイメージが変わってくる。こちらの空間には「先先の先」と書いた。後から打ち込むのを「後の先」というが、未発のうちに打ち込むのが大事。
絵を説明したが、絵の出来はよく分からないところがある。油絵ではどこかに白く残したところがあり、それが宇宙に通じるといわれる。剣道でも大阪教育大の作道(さくどう)正夫先生が「宇宙につながらないと駄目だ」とおっしゃっている。
一言で言うと、技の中に心がある。剣道の技も絵の表現の技も同じである。たとえば剣道の技は強い気持ちを持たないと成立しない技がある。だから、その技ができることで心も大成する。海外に行ったときも技を示すことで心を伝え、日本の文化を伝えることができると考えている。
(文責・井芹)
| 平成27年度前期 崇城大学教養講座 日程表 | ||
|---|---|---|
| 4.24 | 神田 陽子 (講談師・崇城大学客員教授) | 日本の話芸~講談「真田幸村 大阪入城」~ |
| 5.1 | 太田 章 (五輪銀メダリスト) | オリンピックにかける夢 |
| 5.8 | 橋本 五郎 (読売新聞東京本社特別編集員) | 政治は本当は面白い |
| 5.15 | 三遊亭 歌之介 (落語家) | 出会いから学んだこと |
| 5.22 | 澤岡 昭 (大同大学学長) | 国際宇宙ステーションと活躍する日本人飛行士 |
| 5.29 | 村嶋 恒徳 (剣道七段・茗溪学園教諭) | 一剣士が伝えたいこと~剣の技と絵の心~ |
| 6.5 | 内田 亮子 (早稲田大学教授) | 暴走するヒト~からだ・心・言葉の進化を考える~ |
| 6.12 | 松元 崇 (元内閣府事務次官 第一生命経済研究所特別顧問) | 日本経済再生の方程式 |
| 6.19 | 大桃 美代子 (タレント) | 才能は地方で輝く!!~一次産業を生かすアイデア~ |
| 6.26 | 石川 智久 (大阪医科大学客員教授) | 遺伝子研究の最前線 |
| 7.3 | 宇都宮 健児 (前日本弁護士連合会会長) | 私の弁護士人生 |
| 7.10 | 植松 努 (植松電機専務取締役) | 「思うは招く」~夢があればなんでもできる~ |
(敬称略)