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【講演レポート】教養講座「澤岡 昭 氏」講演要旨

2015年05月22日

2015年5月22日 大同大学学長 澤岡昭氏講演要旨

◎国際宇宙ステーションと活躍する日本人飛行士

私は「70歳のとき宇宙に行きたい」と言っていたが、学長で忙しかったので「じゃ75歳だ」と5年延長した。いま76歳。三浦雄一郎さんが80歳でエベレストに登頂した。私も80歳で宇宙に行きたい。バリアーは高いが、何とかクリアしたい。

最長老の宇宙飛行士はジョン・グレンさん。若いときに最初の宇宙飛行士になり、77歳でもう一度宇宙に行った。上院議員となり、75歳のとき「宇宙に行きたい」と思ったが、「お年寄りはだめです」とNASA(米航空宇宙局)が断った。グレンさんは当時のクリントン大統領に手紙を書き「年を取ると骨が弱くなって骨粗しょう症になる。私を実験台に使ってください」と言った。実は宇宙では10倍の速さでカルシウムが身体から抜けていく。人間は立っていると1Gという重力を受けている。これが身体には良い。体重がかかって少し骨が縮む。するとカルシウムがイオン化されて、それがカルシウムの代謝を助けるが、宇宙ではそれができない。グレンさんの申し出に対し、クリントン大統領は「そこまで言うなら行かせよう」となった。そのとき一緒に行ったのが向井千秋さん。もとは心臓外科のお医者さんで、グレンさんを世話した。

宇宙ステーションは400キロ上空を90分で1周する。6人の飛行士が乗っている。宇宙に運ぶのは、かつてはスペースシャトルだったが、今はソユーズというロシアのロケットに運んでもらっている。日本はH2Bという無人ロケットで年1回、物資を運んでいる。「こうのとり」という。1回運ぶだけで250億円かかる。これで日本人飛行士が6カ月間、年1回、宇宙に行くことができる。最近、ロシアの無人ロケット「プログレス」の不具合で、油井亀美也さんの宇宙行きが延期になっている。油井さんは航空自衛隊のテストパイロットで、プロ中のプロです。

国際宇宙ステーションの大家はアメリカ。ヨーロッパや日本など14カ国で作ろうという計画で始まった。当時、アメリカはソ連と張り合っていた。ところが1990年にソ連が崩壊しロシアに変わった。東西の対立がなくなったのでロシアも参加した。1998年に最初のモジュールを組み立てた。

いま日本には8人が宇宙飛行士として登録されている。毛利衛さんや土井隆雄さんは載っていない。向井千秋さんは毎年資格試験を受けて合格しているので宇宙飛行士の肩書きを使っていい。ことし4月から東京理科大の副学長になった。62歳だ。

最初に宇宙飛行士として訓練を受けたのは毛利さん、向井(当時は内藤)さんと土井さん。1986年、スペースシャトル「コロンビア」が爆発したので、アメリカでの訓練は中止になったが、日本で訓練を続けようとなった。そのとき一日中英語で話す授業をやろうとなり、直前にニューメキシコ工科大から帰国したばかりの私に話があった。それがきっかけで「私も宇宙飛行士になりたい」と思った。宇宙病というハシカにかかったんです。それは、この3人と4月から12月まで一緒に勉強したためです。

日本人宇宙飛行士として最初に選ばれたのは毛利さんでした。最年長だったこともある。2回行った。向井さんも2回行った。2回目のときのキャッチフレーズが「私にとって宇宙は仕事場」というもの。その2回目のとき、75歳のジョン・グレンさんと飛行したわけです。1998年にグレンさんが東京に来たときグレンさんと握手をした。話をしていて「すごいおじいちゃんだな」と、こうなりたいと一層強い気持ちになった。三菱重工の双発ビジネス・ジェットで浜松沖の訓練空域で弾道飛行で上に行き、1万メートル上空から急降下すると15秒間身体が浮く。1999年、東京工業大学を定年になり、大同大学学長になった年に経験した。

国際宇宙ステーションはサッカー場と同じ広さ。大きな羽は電気を起こすための太陽電池。ときどき故障するので宇宙服を着て修理する。宇宙遊泳という。英語ではspace walk、宇宙歩行です。2005年、野口聡一さんがタイルの修理をするため宇宙遊泳をした。星出彰彦さんも宇宙遊泳した。お父さんの海外勤務が長かったので星出さんは英語が堪能だ。宇宙遊泳は全員はやっていない。

宇宙ステーションのモジュールにベランダのように突き出ている実験台を取り付けたのが若田光一さんだ。スペースシャトルの最後から2回目に乗ったのが山崎直子さん。いまは宇宙飛行士をやめ、子育て中だ。野口さんと同じユニットで活動した。

大事な話としてトイレのことがある。トイレはロシア製です。アメリカは自分で開発しようとしたが、間に合わず、ロシア製を買って使っている。出た物は遠心分離機にかけ、水はきれいにして使う。ペットボトル1本分の水が70万円もするからだ。穴の大きさは10センチで出した物がなかなか落ちていかない。体調によってダラッとしていたりコロッとしていたり、肉食か菜食かでも違い、みんな苦労している。壁にくっついて毎回掃除しないといけない。きれいさの感覚も国民性で違う。若田さんは時間があれば、トイレを掃除していたので人気があった。船長に選ばれるのも仲間の評価や人気が大事だ。

ことしは油井さんが7月に搭乗する。油井さんは、親の仕送りが難しかったので、給料がもらえる防衛大学に入った。航空自衛隊でテストパイロットになった。次に宇宙ステーションに行くのは大西さん、元全日空の副機長だ。若田さんは九州大学出身で日本航空の整備士だった。

宇宙ステーションは2020年まで運用されることが決まっている。アメリカは2024年まで延長したいと発表したが、ロシアは反対している。私は30年間、裏方の手伝いをしてきたのだから、「最後にご褒美で乗せてね」と言っている。自民党の河村建夫元官房長官に宇宙トイレの開発をして、私自身でテストしたいと話をしてお願いしたら、河村さんは「澤岡さん、行けよ。応援するよ」と励ましてくれた。

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(文責・井芹)

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(敬称略)