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  1. 【講演レポート】教養講座「川﨑博氏」講演要旨

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【講演レポート】教養講座「川﨑博氏」講演要旨

2016年10月18日

2016年9月30日 ホテル日航熊本社長 川﨑博氏講演要旨
◎二つの仕事を体験して思うこと

熊本地震、すごかったですね。熊本は地震が少ないと言われ、防災拠点構想を進めていただけに、二度の震度7というのは過去に経験のない地震で驚きだった。前震の時はホテル日航のお客さんにはロビーに避難してもらい、そこに布団やシーツを敷いて過ごしてもらった。午前3時ごろ、炊き出しをしたら感謝された。本震ではキャンセルのためお客さんは40人くらいだったが、警察から言われて一時は白川公園に避難した。それではスタッフによるサービスもできないので、もう一度ホテルに戻ってもらった。40人のお客さんが帰られた後は休業した。天井の照明器具は全て一旦下ろして全面点検し、壁紙の破れなどを直した。宴会場のパーティションが1枚で重さ1トンもあり、修理に時間がかかった。完全営業再開は1カ月後になった。

古巣の熊本日日新聞社の方は、本震の時に輪転機が回らなくなった。もしものために、熊日は九州のいくつかの新聞と災害協定を結んでいる。他社で印刷して熊本に運ぶ取り決めだ。熊日の技術陣は「自力で修復したい」という気持ちが強かった。西日本新聞は自社の新聞が刷り上がった後も、待っていてくれたが、午前4時12分に輪転機は復旧した。刷り終わったのは午前7時過ぎだったが、配達する道がなく、配達する人が被災し、読者も被災していて大変な状況だった。

演題の「二つの仕事」のうちの一つが新聞社。新聞社にどうして入ったか。私が若い時は70年安保の時代で、ちょうどベトナム戦争もあり、(九州大学生として)反戦運動に勉強以上に熱心に取り組んだ。普通のサラリーマンはできないだろうと思って、新聞記者を選んだ。最近はパワハラなどと言われるが、当時は原稿をそのまま捨てられたり、丸めて投げ返されたりした。それでも書いた原稿が褒められたり、読者から喜ばれたり、スクープできたりするとうれしい。下通に大洋デパートというのがあった。大火事があり営業再開したが、ある時、催事を問い合わせる女の子が「おかしいですね。明日は何もない」と言うのを聞いて、ピンときて取材し同デパートの会社更生法申請が特ダネとなった。
日本新聞協会には130社が加盟している。ジャーナリズムは「第四の権力」とも言われる。(立法、司法、行政の)「三つの権力」を監視するためだ。戦時中に国の情報をそのまま流した反省に立って多くの新聞が反権力を強く出している。選挙の時に「中立」を求められるが、今の政策を検証していくと、どうしても今の政権を批判することが多くなる。「中立」とはみんなに平等というわけではない。

新聞記者時代はひげを生やしていたが、ホテルに行けと言われた時、身だしなみを整えなければいけないと思い、ひげを剃った。お辞儀の仕方も、エレベーターのドアが閉じるまで頭を下げることを学んだ。ホテル日航はもともと熊日本社があったところを再開発し、ホテルと熊本市現代美術館、鶴屋などが入る複合ビルの中にある。開業して14年になる。今は地震の影響で部屋が足りなくて93%の稼働率だ。熊本市内にはシティホテルが4軒あるが、老舗のキャッスルは55年の歴史がある。追いつき追い越せでやってきて、売上高は40億円を超えて一番になったが、まだ人の問題がある。ホテルマンは通常、キャリアを積んだら他のホテルに移りステップアップしていく業界なのだが、このホテルで一生働きたいというホテルにしたいと考えている。お客様満足度ということがよく言われるが、従業員満足度も上げて、ブラック企業とは正反対のブライト企業にしたい。

私は4代目の社長になるが、初代社長がトップダウンで物事を進めてきたので、従業員は上が決めたことはやるが、下からのアイデアが出にくい社風になっている。これを変えていくのが私の仕事だ。来年が15周年なので、社内で30歳代、40歳代の人に任せて、どういう取り組みをするか話し合いをしてもらっている。
皆さんは今、大学1年生だが、自分の目指す姿があって、いろいろ選択しながら進んでいくことになる。自分で提案することは大変だが、「自分が社長ならどうするのか」を日頃から考えていてほしい。工程表を絶えず意識することも大事だ。私が経済記者だった時、企業のトップリーダーにインタビューした。ある頭取に「真っ先にやることは何か」と聞いたところ、「次の頭取を作ることだ」と言われた。
もう一つ、人口減の問題がある。熊本の人口は24年後には146万人と、今より33万人も減る。人口が減るとマーケットが小さくなるので、外から来てもらわないといけない。交流人口を増やす必要がある。そのとき65歳以上の人や女性にもっと働いてもらうだけでなく、一人何役もやらないと回っていかない。交流ということでは、2019年に女子ハンドボール世界選手権とラグビーW杯があるので、2019年までには熊本城天守閣をぜひ復興してもらいたい。2019年には花畑町の再開発があり、2021年にはJR熊本駅の再開発もある。県内だけを相手にしていても、将来はない。熊本のキャパシティーを増やしていかなくてはならない。
(文責・井芹)


平成28年度後期 崇城大学教養講座 日程表

9.23 山川 烈 (崇城大学副学長) グローカル時代を悔いなく生きるために
9.30 川﨑 博 (ホテル日航熊本社長) 二つの仕事を体験して思うこと
10.7 神田 陽子 (講談師・崇城大学各員教授) 講談と遊ぶ・学ぶ(まねぶ)
10.14 上村 春樹 (講道館長) 指導者の役割
10.21 山下 泰雄 (通潤酒造(株)社長) KPPと一緒にブルーオーシャンへ~造酒屋の冒険~
10.28 姜尚中 (政治学者・熊本県立劇場館長) 大学で学ぶべきこと
11.2 阿部 富士子 (造形作家・扇研究家) 知られざる「扇」の世界
11.11 ナヌーク (グリーンランド音楽グループ) 氷と雪に閉ざされた極北の大地グリーンランド
11.18 佐藤 允彦 (ピアニスト・作曲家) コミュニケーション・ツールとしての音楽
11.25 辺 真一 (コリア・レポート編集長) 東アジア情勢をどう考えるか
12.2 バイマー ヤンジン (チベット声楽家) 私の見たチベットと日本
12.9 飯田 敏博 (鹿児島国際大学副学長) カフェ・シーンから学ぶ映画と文学
12.16 米澤 房朝 ((株)ヨネザワ代表取締役社長) 夢は必ず実現する

(敬称略)