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【講演レポート】教養講座「辺真一氏」講演要旨

2017年01月13日

2016年11月25日 コリア・レポート編集長 辺真一(ピョン・ジンイル)氏講演要旨
◎東アジア情勢をどう考えるか


向こう三軒両隣と言うが、近所付き合いは難しい。なぜロシアと仲良くできないか。北方領土問題がある。中国とは尖閣、韓国とは竹島、北朝鮮とは拉致問題がある。世論調査で見ると、日本人が中国人や韓国人を「嫌い」というのは6割ある。逆に中国人や韓国人からは日本人を「嫌い」はもっと多く、8~9割。日本人には嫌われる心当たりがないかもしれないが、これは一度、考えてみる必要があることだ。

日本を動物に例えると何か。韓国はトラです。ソウル五輪のマスコット「ホドリ」はタイガーの子ども。加藤清正の朝鮮半島での虎退治は有名な話だ。中国はパンダだが、尖閣を狙っているのでオオカミとの見方もある。ロシアは昔もいまもクマ。北極熊だ。
さて、日本はトキ。でもトキはクマ、トラ、オオカミに食べられてしまう。秋田県には秋田犬がいる。けんかに強い土佐犬もいるが、1頭ではとても3頭を相手にできない。中国とは武力では戦えない。日中貿易は日米貿易の倍だし、2000万人に上った観光客のうち、一番多いのが中国人だ。領土問題も何か知恵を絞って考えなくてはならない。そのためにはお互いが相手の立場を少し考え、立場の違いや価値観の違いを認め合う相互理解が必要だ。

私が名乗らない限り韓国人とは分からないかもしれないが、決定的な違いは血が違う。私の血の中にはニンニク、トウガラシ、キムチが流れている(笑)。いま韓国では朴槿恵(パク・クネ)大統領辞任を求めて50万人、100万人がデモに参加している。
日韓の気質や国民性は、似ているようで似ていない。日本では畳の上に布団を敷いて寝る。韓国ではオンドルのある床に布団を敷く。中国ではベッドだし、ヨーロッパも同じくベッドだ。日中韓は箸で食べるので同じかというと、箸の長さが違う。日本人はお茶碗を口に近づけて食べるので箸が短い。中国人は大家族で円いテーブルの真ん中に大皿が出てくるので、長い箸でなければ届かない。韓国は大陸と列島の中間なので、箸の長さも中間だ。中国人の声は大きい。大陸だから大きな声を出さないと届かない。日本は島国だからちょっと声を出せば届く(笑)。韓国は大陸と列島の間に挟まれているので大きくも小さくもない。犬の鳴き声も、日本はワンワンだが、韓国はモンモンだ。日本人にポチの声がモンモンと聞こえたり、韓国人にとって珍島犬の声がワンワンと聞こえたらいいと思う。お互いの気持ちを認め合うことが大事だ。

歴史問題がある。テレビ番組の竹島問題で、みのもんたさんから「竹島はどちらのものか」と聞かれた時、私は「分からない」と答えた。韓国人だからといって「韓国の固有の領土」と言うつもりはない。ただ韓国の巻物などを見ると、なるほどと思うし、私自身、日本の土壌と水で育ったので日本人の言い分にも一分も二分もあると思っている。日本人に「韓国人で真っ先に思い浮かぶ人の名前を挙げてください」と聞くと、圧倒的多数が「裴勇俊(ぺ・ヨンジュン)」なのに対し、韓国人に代表的日本人の名前を聞くと、いまでも「伊藤博文」だ。せめて「イチロー」とか「浅田真央」の名前を挙げてもらいたいが、それほど韓国人が(植民地支配への)強い感情を持っていることは間違いない。
2001年、新大久保駅で線路に落ちた人を助けようとして、韓国人留学生と日本人カメラマンが死んだ。その時、日本人のお母さんは涙一つ見せず、凛として息子を偲んだ。これに対し、韓国人のお母さんは泣きじゃくった。韓国人から見ると、日本人のお母さんは情が薄いと思われた。取り乱すことのないよう凛として対応したのだが、それが韓国人にはそれが理解できない。どちらが良い、悪いという問題でなく、それが国民性の違いだ。

竹島問題は、それほど難しい問題とは考えていない。昔は無人島だったので、もう一度無人島に戻す。お互い領有権を主張せず、島の周辺の水産資源と海洋資源を共同開発するしかないが、双方とも受け入れられないようだ。お互い「固有の領土」と主張しているからだ。
もう一つある。竹島は2つの島からなっているので、東島と西島の間に中間線を引いて分けたらいいと言ったら、非難轟轟だった。「自分の島をなんで半分渡すんだ」ということだ。でも軍事力で解決することもできない。過去には、島に爆弾を落として破壊してしまったらいいという話もあったが、日韓双方とも「自分の国の領土に何で爆弾を落とすのか」という意見が出て止めた。漫談師のセリフではないが、「あれから51年」。何とか落としどころを考え、お互いプラスになるウィン・ウィンの関係を考えないといけない。
ロシアとの北方領土問題もある。レフェリーの立場で言えば、2島を返してもらって、残り2島を後回しにしても平和条約を結ぶのが現実的な選択かもしれない。

どの民族が我慢強いか。豚小屋が火事になった時、我慢比べをしたらまず韓国人が飛び出してくる。韓国人は我慢強くないというのはその通り。だから私は我慢強い大石内蔵助に共感を覚える。次に追っかけて出るのが日本人。日本人はせっかちでしょ。次は豚。最後が中国人だ(笑)。香港が1997年、マカオは1999年に返還された。(我慢したおかげで)これだけ発展した都市が手に入った。領土問題は向こうもこっちも顔が立ち、利益になるような落としどころが大事だ。

尖閣諸島も何とかしなくてはならない。日本は中国と国交を結んだ時、台湾と手を切ったが、いまは台湾をバックアップしている。それは沖縄に米軍を駐留しているからだ。米軍は日本の防衛のためだけでなく、朝鮮半島有事と台湾有事のためにも駐屯している。日本はやがて、台湾か尖閣かの二択を迫られる時が来るかもしれない。米国は条約があって台湾を守らなければならないが、日本は守る義務がない。にもかかわらず沖縄を米軍に貸している。日本のマスコミは、中国は尖閣周辺の水産資源や石油資源を狙っているからだと報じているが、違った角度から見ることも必要だ。日本国民は横並び意識が強く、全員が右向け右で、一点集中となりやすい。

2011年に北朝鮮の金正雲氏の父親、金正日氏が心臓発作で亡くなった当時は、民主党の野田政権だった。弔電を送ろうか悩んだが、大方の国民が「拉致をした実行犯の金正日の死亡になんで弔電を送るんだ」と反発した。それで野田さんは、マスコミや世論に押されて弔電を送らなかった。横田めぐみさんの父、横田滋さんは私が「これはおかしい」と言ったら、横田さんも「弔電を送るべきだった」と言っていた。北朝鮮は3・11の東日本大震災の時にお見舞い電報だけでなく、わずかだが見舞金まで送ってきた。9カ月後、その国の指導者が亡くなったのに弔電も送らなかった。こんな度量の狭さでは、問題解決はできない。難しい問題を解決するには、相手の気持ちを察することが大事だ。金正雲があの国のトップになった時は、25歳で相当心細かったと思う。当時の野田首相が「ご冥福をお祈りします」との弔電を届けたら、悪い気はしなかったでしょう。日本がきちっとやるべきこと、言うべきことをやれば、向こうからも何かしら反応が返ってくるものだ。

日本と北朝鮮との間にだけは、領土問題が存在しない。資源紛争もない。ミサイルを恐れているが、交戦状態にはないわけだからミサイルを撃たれるような覚えもない。金正日は1941年の戦前生まれで知日派だ。アントニオ猪木や引田天功を招いたのは金正日だった。日本の映画、テレビもよく見ていて、映画『フーテンの寅さん』は48本すべて見ている。1990年に土井たか子、小沢一郎両氏が訪朝した時、答礼で訪日する側近に金正日は「国交正常化の暁には、私が訪日したい」との親書を持たせていた。1度くらい呼ぶべきだった。小泉さんは2度訪朝している。きちんとお返しするのが日本の良き文化なら、3度目の日朝首脳会談は、日本でやるべきだった。日本に呼んで柴又で首脳会談をしたら、一発で拉致問題が解決したかもしれない。
トランプさんが当選した。トランプと金正雲ではかみ合わない。とんでもないことが起きそうな気もする。いずれにしても一刻も早く拉致問題を解決し、世界で唯一国交のないお隣の国と関係を正常化してもらいたい。
(文責・井芹)


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10.21 山下 泰雄 (通潤酒造(株)社長) KPPと一緒にブルーオーシャンへ~造酒屋の冒険~
10.28 姜尚中 (政治学者・熊本県立劇場館長) 大学で学ぶべきこと
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(敬称略)