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【講演レポート】教養講座「古庄忠信氏」講演要旨

2016年07月05日

2016年6月17日 (株)イズミ車体製作所会長 古庄忠信氏講演要旨
◎「気づき」の経営

配ったレジメに「言忠信 行篤敬」と書いたが、私の名前は「忠信」です。「言忠信」とは、誰にでも話をするときは真心を込めて誠意を持って話をするということ。「行篤敬」とは、何かを行うときは篤い、すがすがしい心で相手を敬いながら行動しなさいということです。毎回、反省しながらですが、そういう高い志だけは持っている。

イズミ車体製作所は創業から85年、会社設立から65年になる。私は昭和41(1966)年高校を出て入社した。入社から6年経ったころ、親族が集められた。会社が倒産するという話を聞かされた。社長に「それなら看板だけください」と言うと、当時の社長は「若手でやる気がある者がいるので、会社をやらしてみようか」となった。「身内の一人に社長をやってもらえればやります」と答え、私自身は26歳のとき取締役になった。そこから悪戦苦闘が始まった。

当時は技術がありながら利益の出ない会社だった。そこで県内に限らず、鹿児島、宮崎に営業をかけたところ、「お前のところなら任せられる」という評価を得たが、今度は九州一円の業者と競争しなくてはならなくなった。他人がやらない仕事を発明するのが先決だと考えた。当時、高齢化社会に向けた「ゴールド・プラン」が出たので、これを勉強したら大変な高齢化社会を迎えることを知った。高齢者を送り迎えするリフト付きの車が必要だと発見。日産キャラバンを改造してリフト付きの車を開発した。病気やがんの早期発見も必要だろうと考えて検診車を開発した。トヨタやホンダがまだ福祉車両に乗り出していないときに、真っ先に売り出して特殊車両のイズミ車体製作所と言われるまでになった。自分たちで考えた車両だから付加価値が高まる。そのときの社会が求めるものを、誰よりも早く気づくのが会社経営をやっていくうえで大事だ。

労務管理でも気づきが重要だ。4月19日にまだ水も電気もないときに集まってもらったら9割の社員が出社してくれてありがたかった。25日からは予定通りに10連休に入ったが、入る前に社員への好意を示すため見舞金を7月賞与の前払いの形で配った。連休中に機械メーカーに頼んで復旧させ、連休明けの9日から作業ができるようにした。工場の建物の修理は後回しにして仕事ができるようにした。会社に行けば仕事があり、仕事をすれば希望がある。それも一つの気づきと思う。社員の気持ちになって考えると気づくし、社員のためにもなる。地震後、社員同士のきずなも深まった。

福祉車両は順調だったが、順風満帆ばかりではなかった。月に何千台と売れるようになり、岐阜や仙台の同業者に仕事を教えていたが、トヨタに呼ばれたときは背筋が寒くなったのを今でも覚えている。トヨタが福祉車両を作り出すという話だった。やがて日産も作り始めたので、大手メーカーが参入してこない仕事を強化しようと思った。このころ大津町の現工場に移ったのは空港に近く首都圏とつながっていることや、安い価格で受注しても採算のとれる工場にするためだった。検診車製作を強化して、レントゲン車では日本一のシェアとなった。

いつまで検診車ばかりに頼っていられるかと考えて、現在、再々チャレンジしているのが、熊大の松田俊郎准教授と一緒に開発しているEVバスだ。けさ(6月17日付)熊日の経済面に掲載されている。パリでのCOP21で日本は「温室効果ガスを26%削減する」と約束している。ディーゼルエンジンで走る路線バスをすべてEVバスに代えたい。オリンピックのある2020年までに東京中のバスをEVにできたらすばらしい。試作車では改造に5000万円かかった。これを1000万円に下げると、バス会社は国から500万円の補助を得て、燃料代を4年間で取り戻せる。今回、開発費4億円が環境省から認められた。バスは1回の充電で50㎞走る。これを再々チャレンジと考えている。

イチローがピート・ローズを超える4257本の安打を打ったとき、「私は他人に笑われることばかりやってきた」と言っていた。他人から笑われるような、夢みたいなことを掲げた。一流になるにはそうした遠回りすることが大事だ。剣豪・宮本武蔵みたいだとも思った。私も「なんで産交以外の仕事をするのか」とか「検診車なんか作ってどうするのか」と言われた。それでも全国に目を向けてやってきた。イチローと同じように、他人から笑われて悔しい思いを何度も味わったが、それをあきらめずにやってきたことが今日ある。目の前にあることを一生懸命やることが大事だ。それしかない。
(文責・井芹)

DSCF1386 (2)古庄忠信氏.JPG

平成28年度前期 崇城大学教養講座 日程表
5.13 フルック (ケルト音楽グループ) ケルト音楽の現在
5.20 神田 陽子(講談師・崇城大学客員教授)講談「中山義崇物語」~崇城大学創始者に捧ぐ~
5.27 江守 正多 (国立環境研究所室長) 気候変動リスクと人類の選択
6.3 大久保 剛 (フンドーダイ㈱ 前副社長) 「生き方」を考える
6.10 重光 克昭(重光産業㈱ 社長) 熊本発世界ラーメン
6.17 古庄 忠信 (㈱イズミ車体製作所 会長) 「気づき」の経営
6.24 廣瀬 幸雄 (金沢大学 名誉教授) 美味しいコーヒーの飲み方
7.1 秋山 幸二 (ソフトバンクホークス 前監督) 私の野球人生
7.8 向大野 新治 (衆議院 事務総長) 通説的国会論では理解できない国会のあり方
7.15 トム・イェイツ(在福岡オーストラリア総領事) 日本とオーストラリアの教育のパートナーシップのあり方(仮題)
7.22 相田 美砂子 (広島大学 副学長) コンピュータで進める化学と男女共同参画
7.29 高光 りょうすけ (感動教育家) あなたを輝かせる源は感動力にある

(敬称略)