【講演レポート】教養講座「江守正多氏」講演要旨
2016年06月14日
2016年5月27日 国立環境研究所室長 江守正多氏講演要旨
◎気候変動リスクと人類の選択
熊本地震の被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。まず5分間の映像を見てください。2050年、34年後の天気予報です。東京は35度、夏には40.8度でした。真夏日が連続50日、熱帯夜が60日。これはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書に基づいて作った。もともと地球は太陽からエネルギーを受け取り、赤外線を宇宙に出している。赤外線が何にも遮られずに出ていくと地球はマイナス19度にもなるが、水蒸気やCO2、メタンガスなどが赤外線を吸収し、地面に向かって放出するので地表面は14~15度になる。過去1万年だいたいこの温度が保たれてきた。
1958年にはCO2濃度が310ppmだったのが、現在は400ppmになっている。これは人間活動として化石燃料を燃やしCO2を放出したためだ。世界平均気温の変化を150年前から通して見ると1度弱上がり、海面は20cm弱上昇している。北極の氷が解けても海面は上昇しないが、陸上の氷が解けることと海水の熱膨張による。
IPCCは95%以上の可能性で、近年の温暖化の主な原因は人間活動だと結論付けた。対策無しの場合、今世紀末には世界平均気温が4度くらい上がると予測している。そのとき海面上昇、洪水、台風、熱波、食糧不足、水不足、海と陸の生態系の損失という8つのリスクがある。洪水対策や高温に強い作物などの個々の対策も必要だが、温暖化そのものをどこかで止めないといけない。
昨年のエルマウ・サミットでは「2100年までに世界経済を『脱炭素化』する」ことが合意され、昨年末にパリ協定ができた。ここで各国が削減目標を自分で決めてよいとなった。各国の削減がすべて実現しても3度前後上がってしまうが、まだ始まったばかりだから、各国の目標を強化しながら検証を進める必要がある。一部には世界のCO2排出量はピークを過ぎたとの見方もある。過去2年、世界経済は成長しているのにCO2が増えていない。中国が再生可能エネルギーを増やし、石炭を減らしている。世界的にもエネルギーの使い方が分岐点に差し掛かっている。国としてのエネルギーのあり方をよく考えていかないといけない。皆さんも大きな関心を持っていってください。
(文責・井芹)
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気候変動リスクと人類の選択 |
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