ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ

TOPキーワード

入試サイト

資料請求

  1. 【講演レポート】教養講座「橋本五郎氏」講演要旨

イベント・公開講座

【講演レポート】教養講座「橋本五郎氏」講演要旨

2015年05月22日

2015年5月8日 読売新聞東京本社 橋本五郎氏講演要旨

◎政治は本当は面白い

必要なことは3つある。第一は健全な相対主義。その反対は絶対主義だ。宗教で言うと一神教と多神教。相手を認めないとなると相手を倒すしかなくなるが、日本は違う。神棚も仏壇もある。一木一草に神様が宿るという考え、これが多神教だ。他の人が信じていることを認めないことが、世界に紛争が続く底流にある。ある政党が言っていることが100%正しくて、他の政党の主張が100%間違いなどということはない。政治の世界ではせいぜい51%対49%の世界だ。その中で何を取るかと考えるのが健全な相対主義だ。相手の主張によく耳を傾けないといけない。

第二は適度な懐疑論。例えば殺人事件が起きて犯人が逮捕されたばかりの時、なぜ殺人事件を起こしたかはなかなか分からない。大切なのは断定しないこと。自分が間違わないかとの恐れを常に持っておかないといけない。自らを疑う気持ち、謙虚な気持ちが大事だ。

第三に鳥の目と虫の目。上空から大きな鳥になって、その目で見ないと全体は分からない。一方で、今日の教養講座に来ている人はどういう表情かは鳥の目では分からない。地面をはいずるように細かく見ないといけない。それが虫の目だ。2つの目をもって見ないと物事が見えないのだ。

今の内閣はなかなか面白い内閣だ。新聞は真っ向から対立している。安倍内閣がやっていることに対して、「支持する」が産経新聞、読売新聞、日経新聞。「支持しない」が朝日新聞と毎日新聞。例えば靖国神社参拝や集団的自衛権についてそうだ。この内閣は何が特徴か。それまでの内閣はx(エックス)という字で表せる。世論調査での内閣支持率をみると、「支持する」は右肩下がりで、「支持しない」は右肩下がり。途中で交わるので「x」になる。小泉内閣の後は、第一次安倍内閣を含めてことごとく「x」だった。ところが第二次安倍内閣は一度も交わっていない、最近では珍しい内閣だ。

好き嫌いは別にして冷静に物事を見ないといけない。第一に、安倍内閣は民主党内閣時代に比べて経済に明るさが見えてきたこと。政治のリーダーにとっては自分が信じたことを断固としてやる姿勢が大事だ。鳩山由紀夫元首相は「普天間基地の代わりに基本は海外、最低でも県外」と言った。何か当てがあるのかと思ったら何もなかった。「こうしたい」と言ったら、それに向けて努力しなくてはならない。マックス・ウェーバーは『職業としての政治』のなかで「政治とは、情熱と判断力を駆使しながら硬い板にじわじわと穴をくり抜く作業である」と言っている。

中曽根康弘元首相が政権に就いたのは1982年11月27日。年明け1月5日に突然、韓国訪問を発表する。それには周到な準備があった。第1次安倍内閣のとき、私は安倍さんに「中曽根さんを見習わないといけない」と言った。そこで何をやったかと言うと、中国に行くことをやった。中国との関係は小泉さんが毎年、靖国神社を参拝したので、中国も手を焼いていた。安倍さんは就任から10日後に突如として中国に行くことを発表した。これは自慢できることだが、国会議員の前で1週間前に講演して「行ける」と言った。確かに中国は、安倍首相が「靖国に行かない」と言わない限り、日中首脳会談に応じないと言うし、こちらは「靖国参拝に行かない」とは口が裂けても言えない。そこで方法はただ一つ。「任期中は行かないな」と相手に思わせ、中国側も「ああだこうだ」と日本を批判しないことだ。領土問題も同様で、難しい問題だ。半永久的に解決しない問題かもしれないが、そういうとき政治は何をなすべきか。領土問題で両国関係を決定的に悪くしないようにすることだが、その努力はまだ足りない。

政治においては目標をしっかり持って、断固としてやることと、そのための周到な準備が大事だ。皆さんが政治を見るとき、大きな鳥の目と小さな虫の目で注意深く見ていくと、いろんなことが見えてきます。

日本の政治における最大の問題は2つある。第一は少子化。子供が生まれないと国は亡ぶ。結婚して、安心して子供を育てられないと大変だ。年寄りに使っている金を若い人に移さないといけない。亡くなった、私のお袋なら「私たちは苦労に慣れているが、若い人は離れていない。私たちがもうちょっと苦労するから、若い人にお金を渡してください」と言ったことだろう。民主党の子供手当はバラマキと批判され評判が悪かったが、いいバラマキと悪いバラマキがあったはずだ。第二は地方に元気が出るようにすること。安倍内閣は地方への同情が足りないような気がする。私は秋田生まれだが、多くの政治家が東京生まれ、東京育ちなのも気になる。安倍内閣が掲げる地方創を今後、よく見ていきたい。

(文責・井芹)
 
IMG_0137_s.jpg

平成27年度前期 崇城大学教養講座 日程表
4.24 神田 陽子  (講談師・崇城大学客員教授) 日本の話芸~講談「真田幸村 大阪入城」~
5.1 太田 章 (五輪銀メダリスト) オリンピックにかける夢
5.8 橋本 五郎  (読売新聞東京本社特別編集員) 政治は本当は面白い
5.15 三遊亭 歌之介  (落語家) 出会いから学んだこと
5.22 澤岡 昭  (大同大学学長) 国際宇宙ステーションと活躍する日本人飛行士
5.29 村嶋 恒徳 (剣道七段・茗溪学園教諭) 一剣士が伝えたいこと~剣の技と絵の心~
6.5 内田 亮子   (早稲田大学教授) 暴走するヒト~からだ・心・言葉の進化を考える~
6.12 松元 崇 (元内閣府事務次官 第一生命経済研究所特別顧問) 日本経済再生の方程式
6.19 大桃 美代子  (タレント) 才能は地方で輝く!!~一次産業を生かすアイデア~
6.26 石川 智久  (大阪医科大学客員教授) 遺伝子研究の最前線
7.3 宇都宮 健児 (前日本弁護士連合会会長) 私の弁護士人生
7.10 植松 努  (植松電機専務取締役) 「思うは招く」~夢があればなんでもできる~

(敬称略)